第1章

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あらましはこうだ。 どこにでもある平凡な住宅街で三名の刺殺体が発見される。被害者の年齢も性別もバラバラで、三人の関係は不明。現場には争った形跡が色濃く残されているものの犯人は現在も見つかってはいないという。 「で、僕が四人目ってことですか?」 「いえいえいそこまでは」  おっさんは苦笑して話を続ける。 「これはまだマスコミには伏せているんですがね、実は現場には死体の他に意識を失って倒れていた方もいたんですよ」 「それが僕だと」 「そうなんですよ。お願いします。どんなことでもいいんです。思い出してください」  そう言っておっさんは、また僕に頭を下げる。 「そんなこと言われても……」  少し薄くなったおっさんの頭頂部から逃れるようにして、もう一度写真へと視線を移す。  散乱した靴やバッグにはそれぞれ番号の書かれた看板が置かれている。 「僕の持ち物って靴だけだったんですか?」 「ええ。残念ながらそれはこちらでお預かりさせてもらっています」 「……」  おかしくないだろうか?  記憶をなくす前の俺がどんな人間だったかは分からないが、どうして財布もケータイも持たずにそこにいたのだろうか。  答えを求めるように再び写真に視線を走らせていく。  うん?   その時一枚の写真に目が止まった。どうにも気になり、それを手に取る。 「何か気がつきました?」 「いや……」  写真には、イヤリングが写っていた。ピンク色のガラス製の飾りがついたイヤリング――なんの変哲もない若者向けのアクセサリー。自分でも分からないけどどうしてか、それが引っかかる。 「……女子高生?」 「ああ。イヤリングですか? 確かに、ええ……女子高生の持ち物だったと思いますけど」  おっさんも写真をのぞき込んでそう答える。  どうして女子高生だと思ったのか自分でも分からない。  だけど、それを見た瞬間、ズキリと頭が痛んだ。  痛みは増していき、痛みと共に記憶の断片が蘇ってくる。  真っ赤な夕日。  血の臭い。  こっちを睨む少女。  突然真っ暗になる視界。  そうか。俺は。  口元が歪む。  ――そうか。そういうことだったのか。  その時、突然、病室の扉が開いた。 「重さん」 「おう」  
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