ピンポンダッシュ

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ピンポンダッシュ

 最近、近所の子供達の間でピンポンダッシュというイタズラが流行っているようだ。  イタズラの内容は、見知らぬ家の玄関先に赴き、その家のチャイムを鳴らす。ピンポーンという音に反応した家人が出て来る前にダッシュで立ち去るというもので、他愛もないと言ってしまえばそれまでだが、わざわざ時間を割いて対応に赴いたのに、結局誰もいないという状態は、家人にしてみれば甚だ不愉快なものだ。  ウチもこの前からちょくちょくチャイムを鳴らされていて、うっとうしいし腹立たしい。  幸いにも、近頃じゃ玄関先はカメラで丸見えだから、子供が逃げても後で苦情を言いに行くことができるけれど、やはりこういうことは、現行犯を取っ捕まえてガツンと説教するのが何よりだろう。  そう思い、休日の昼間、妻と連携してイタズラ犯を待ち変えまた。  方法は至って簡単。妻がインターフォンの側でカメラ越しに外を見張る。子供達が現れたらバイブにしたスマホに連絡をもらい、チャイムを押すと同時に、物陰に潜んでいた私が飛び出して悪ガキどもを捕まえるというものだ。  来る時間帯は、午前なら十時半頃。午後は二時過ぎ。来るならそろそろ現れる時間だ。  ポケットのスマホが震える。どうやら来たようだ。  チャイムの音はここにいても聞こえるから、響いたと同時に飛び出そう。そうすれば言い逃れはできない。  ピンポーン…の、最初の音で物陰から飛び出す。子供達は三人。慌てて逃げようとしたが逃がさず、全員の名前を聞き出し、親に連絡を取った。  子供のイタズラくらいで…という意見もあったが、悪いことだと判らないなら学校なりに連絡をし、もっと大勢の人間に良し悪しを判断してもらいましょうかと伝えたら、皆大人しくなり、親ごと謝罪をしてきた。  だから、今後はこんなイタズラは決してしないこと。もしまた自宅や近所で同様のイタズラが為されたら、迷わず学校へ連絡すると灸を据え、親共々お引き取り頂いた。  私達が子供の頃は、よその大人に叱られたりしたら、怖くて二度とやらないと思ったり、こんなに怒らせてしまうことなのかと反省心が芽生えたりしたものだが、昨今は親すらああいう態度の者が多いから、やりすぎなくらいの処置もやむを得ないだろう。
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