三本目のたばこ

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 たばこを一本取り出し、火を付ける。この店に来て三本目だ。煙を吸い込むと少し頭がクリアになった気がしてくる。  そうだ、そもそもあの日、父の様子はおかしかった。父は厳格な人物だった。もし普段の父なら会社を早退して私と遊びに行ったりはしなかっただろう。もちろん、久しぶりに息子が訪ねてきたのだから、それくらいの融通はしてもおかしくはない。それでも、それは父の性格に合わない気がした。そしてだからこそ、あの日私は一生忘れられないくらいの喜びを感じたのだ。  そもそも、父の様子がおかしかったことと、事件に何か関係はあるのだろうか?  もしあるとすれば、それは……。
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