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古風な木製のドアはカウベルを鳴らし、店内に来客を知らせる。それなのに、カウンターの奥にいるマスターらしき男は顔を上げる様子もない。仕事にあまりまじめではないのかもしれない。
しかし、今の私には周囲がそれくらい無関心な方がありがたかった。店主の言葉は聞こえてこないが、私の脳裏には先ほど受けた電話の声がはっきりと残っていた。私の十二歳年の離れた妹からの電話は、予想外の言葉から始まった。
「お兄ちゃん、お父さんが、死んじゃった」
それはつい先日高校に上がったばかりにしては少し幼すぎる言葉遣いにも感じたが、それも無理はないかもしれない。そのくらい、彼女が発した言葉の意味は衝撃的だった。
「いったいどうした、落ち着いて話すんだ」
私は隣に会社の後輩がいたためか、あまり動揺せずに尋ねることができた。私の落ち着きに触発されたのか、
「お父さんが歩道を歩いていたら、急に車が突っ込んできて。居眠り運転じゃないかって。何でも、現場にブレーキ痕が無いからって」と、多少落ち着きを取り戻し説明してくれる。
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