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「大丈夫ですか?」
大人の男が一人、声もなく泣いているそんな異様な光景が気になったのか、マスターらしい男性が声を掛けてくる。
「何か問題がありましたか?」
「いえ、そういうわけでは」
私は正直放って置いて欲しいと思いながら応える。それでもマスターは、
「お久しぶりですね」と私の顔を見ながら話しかけてくる。
「以前はよくお越しになっていましたが、最近はご無沙汰でしたね。最後にお見えになったとき、息子がいつの間にか大人になっていたと喜んでおられましたけど」
「おじいちゃん、失礼ですよ」
店員らしい女性店員がそう言ってマスターをたしなめる。と言うことは、この二人は祖父と孫という関係らしい。女性店員は、
「すみません、祖父は最近物忘れが酷くて」と頭を下げる。
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