北川精神病院へ

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北川精神病院へ

3人共、茶色の客車の3等車に乗った。汽車の汽笛が出発の合図を鳴らした。「ポー」と鳴って客車が、ガタン、と動き出した。榮にとって最後の旅であった。3人共に固唾を呑んで走る列車の中で、話をするわけでも無く黙って座っていた。ガタンゴトン、ガタンゴトン汽車は折居駅を少しずつ離れていった。木でできた座席に座ると孫一は尻が痛かった。 そうこうするうちに、浜田駅に到着した。ターミナルへ出るとみんなでハイヤーに乗った。 そうして、北川精神病院についたのは午前8時頃の事だった。 元沼地を開拓して出来た、木造建築の白いペンキで塗ってある平屋建ての建物が2棟たっていた。 開放病棟の1病棟、そして閉鎖病棟の2病棟である。ハイヤーを降りると3人は白いペンキの剥げかけた木製の階段を1歩1歩噛みしめるように上がって行った。扉を開けると、どこか陰鬱な薬品臭のかようところであった。「お父さん、ここどこ?」と孫一は聞いた。「だまってついとりゃあええだ。」と言って取り合ってもらえなかった。
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