引力

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引力

ザアアア… 不意に強めの風が吹き抜けて頬を冷やしていった。 「それは…おめでとう?」 「なんで疑問系?」 笑う彼女から目を逸らして見た目の前の景色 所々にある街灯や店の看板の灯りが煌めきを放って街全体に輝きを与えていた。 「…深い意味は無いけどさ」 遅れて呟いた自分が明らかに動揺しているのがわかる。 格好悪いな… 「そんな幸せど真ん中な人が、なんで1人寂しくこんなとこに来てんのよ。」 ”本当は気が進まない結婚なんだ” 可能性的が0に近い答えを心のどこかで期待している。 最低だな俺。 「結婚前だって色々考える事があるんですよ。」 彼女もまた、こっちを見ずに目の前の景色を見ながら答えた。 「亮太さんは?」 「俺は寂しい独身です。予定もありません」 「じゃあ…きっと、そういう時がくればわかりますよ。」 「そういうもんかな」 「そういうもんです」 やり取りが面白いのかクスクスと笑う彼女 人のものってわかった後なのにやっぱりそのふわりとした髪に手を伸ばしたい衝動に駆られて、思わず息を吐き出した。 いや 届かないって分かったから余計に伸ばしたくなったのかもしれないけど。 「亮太さんて不思議ですね」 「そう?至って普通な奴だと思うけど」 「何て言うか…落ち着いていて、居心地がいい感じがします。」 …この状況でそういう事言うかよ。 何で彼氏がいんだよ。 しかも結婚てさ…。 俺を笑うかのように、また風が吹き、木がザザアっと音を立てた。 .
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