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中学高校にもなれば同じ学校を選んでも交わる事のないその距離は近くて遠い。届きそうで届かない。それが俺の初恋の相手であり、俺が少し早い厨二病的な言動をはじめた原因……は言い過ぎかもしれないが、背丈や制服、胸、女性的な特徴を纏い、妙に大人びてしまったこのマオとの間にぽっかりと開いていく暗い暗い距離が、俺にそんな言動を取らせていたのだと思う。だからその日もいつもの様に虚言を叫ぶ。口には虚言、心では構って欲しい、ただそれだけの陳腐な願いを込めて……
「近づくなマオ!俺の腕は今暴走しかけている!!近づけばこの腕から刃のような翼が飛び出してお前を巻き込んでしまうかも......し……?」
しかし、その日の虚言は虚言にはならなかった。
【ぶぉしゅん】
聞きなれない音とともにそれは服と俺たちの日常を突き破り、日の元に現れた。
いつもと同じただの虚言のはずだった。いつもと同じただの厨二病。ただの特別視したいお年頃の下らない一人遊び。それがまさか、現実になるなどと思うはずもなかったが、それは起きてしまった。
「え?なにこれ......」
まだ、現実の見えないマオに代わりに俺が驚愕する。
「え......マジ!?」
それは夢でもなんでもなく、ただただ嘘の様な現実。
「うそおおぉおお!?」
驚愕する俺と放心状態のマオ。マオは両手で胸を抑えている。制服の背面は大きく破れ、突然生え出した蝙蝠のような黒色の翼がバサバサと忙しなく動いていた。
いつもの虚言が現実になった瞬間……ただし、翼は俺の腕ではなく、マオの背中に生えていた。
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