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人の業とはおそろしいものじゃ 2024年11月11日
先日、亡くなった叔母の財産を管理をしてくれた司法書士の先生に呼ばれた。
それは親族に、相続意向を確認する書類を送付したので、
その結果をつたえたいという。
叔母がのこした遺産、土地や家屋を相続するかをたずねたわけだ。
叔母は生涯独身なので、子どもがいない。
叔母の姉妹は6人いる。叔母は三女。長女、次女、長男は亡くなった。
のこっているのは、次男と末っ子のわたしの母だけだ。
ところが、亡くなった姉妹には、
つぎの子どもまで相続の権利がまわってくる。
すると、子どもをふくめ、権利者は12人である。
先生の話によると、その12人うち、4人が貯金など相続したい、
1人が貯金と家屋、一部土地を相続したいと返信されたという。
つまり、5人が相続したいと名乗りでたわけである。
ただ、次男だけが締め切りがすぎ、返信がないので催促中。
では、わたしの母はどうかというと、母は認知症。
なのでわたしの意思で、母に確認をせず勝手に決めた。
いっさい相続しない。放棄すると決めたわけだ。
その意思確認は亡くなって2か月以内に確定しなければならない。
わたしは先生から結果をきいておどろいていた。
てっきり、だれも相続しないものだとおもっていたからだ。
田舎の田んぼに囲まれた古い家屋。ただ、ちょっと規模がおおきい。
家のまわりは高い樹木におおわれ、干からびているが庭に池もある。
なので、わたしは図書館から空き家対策の本を借りて、思案していた。
たぶん、だれも相続しなければ、わたしが管理人となって、
家や土地の処分のやりくりをしなければならなくなる。
先生もこまっていた。
叔母が亡くなるまでの約8年間、ずっとわたしが叔母の面倒をみて、
経過をみて、なんども先生と打ち合わせをしてきたからだ。
遺産の放棄は、先生とのつながりも切ってしまうことでもある。
叔母の家のゆくすえは、
こんどは遺産相続するひとたちだけででまとめなければならない。
相続人がみな、遺産のゆくすえを納得する必要がある。
けれど、面識のないひとたちだけでまとめるのはむずかしい。
それもそのはず、叔母の家は佐久市にある。
みな、他の市町村や東京や名古屋の親族もいるわけだ。
ほんらい、叔母の保護者であるわたしが、母の代理で相続すれば話ははやい。
「そこで、どうしたらいいものか・・・」
先生からすれば、司法書士の立場上、法的に解決することであって、
バラバラの親族をまとめて、方針をきめる進行役ではない。
先生が親族一軒一軒、むきあって対処するには数がおおすぎるのだ。
親族をまとめあげる中心人物がいないのである。
そこで、わたしはひとつ提案をした。
「親族会議をしましょう」
そもそも、親族たちは、
わたしが叔母の保護者となり身のまわりの世話をしていたことはしっている。
今回の件で、親族から、わたしの家に電話連絡すらないのは気味がわるい。
それまで、叔母の様態がわるいころ、叔母に会ってもらいたいとか、
葬儀の形式になにか希望があるか、電話でききまくっていたからだ。
あなたの好きにすればいい、というだけで、
だれもねぎらいの一声がなかったわけである。べつに不満でもいいのだ。
そこで、叔母が亡くなったとき、親族にはいっさい知らせなかった。
わたしひとりが葬儀に立ち会う一日葬にしたわけである。
わたしの意地であり、あきらめだった。怒りもあった。
ただ、今回の件・・・わたしにすれば・・・
おまえら、金だけは平気でもらうのだな!
なのである。
叔母の母親が亡くなったとき、親族で遺産相続で相当もめたことを、
わたしは母から聞いている。
親族会議をしましょう。みな顔をそろえて話をしましょう。
先生はその場でいるだけでいいです。そのほうが話がはやいです。
わたしも参加します。見届ける責任があります。
そんなことを先生につたえた。
たぶん、相続希望の親族たちは、水面下で申し合わせができているとおもう。
だからこそ、電話で、わたしに事前に確認する質問がなかったのだとおもう。
親族会議ともなれば、
喧々ごうごうと、ツバがとぶような激しい欲がうずまくのか。
しずかに、粛々と、あっさりとカタがつくのか。
仕事をしていたとき、日々、こんなヒリヒリするような場面があった。
わたしは、たぶん、こんなめんどくさいことを、どこかすこし期待し、
たのしんでいるのだとおもう。
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