ひとが死ぬということ②  2024年7月27日

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ひとが死ぬということ②  2024年7月27日

わたしはふだん、叔母の世話もしている。彼女は93歳の高齢だ。 もともと叔母は一軒家の一人暮らしで、彼女もまた認知症である。 家は田舎ならではの、おおきな木造の平屋だ。 その後、彼女をどうにか介護施設にいれ、なんとかこれまで生きてきた。 が、先日、食べ物を吐いてしまい、緊急入院となったわけである。 昨日、主治医によばれ、わたしは入院先の病院にいってきた。 食べ物を口からいれることはできないので、点滴処置になる。 それは延命処置なので、まもなく亡くなるというものだ。 一か月も持たないでしょう、という。 そうか、ついに、そのときが来てしまったか・・・ わたしはうなだれ、とりあえず姉にメールをおくった。 まもなく叔母が亡くなる、覚悟してくれというものだ。 この姉は、いぜん、叔母が徘徊で警察に保護されたとき、 家が警察署の近所なので、わたしの代わりに対応してほしいとたのんだら、 その日はフラダンスの発表会だからいけないなどと、ほざいた姉である。 なにをのんきにフラダンスなどと、怒りをおぼえた10歳年上の姉である。 わたしは姉のド派手なビキニ姿の踊りを想像しながら、 高速道路をつかって、もうっ! と涙目で署までぶっ飛ばした記憶がある。 さっそく姉からメールがきた。「知らせてくれてありがとう」 わたしは病院から車で帰宅中、それを確認した。 しばらくして、わたしのケータイが点滅した。メール着信のお知らせ。 信号で車をとめたとき、チェックした。 「ところで相談したい。つぎの木曜○時あいてる?」 わたしはパパっと「あいている」と打ち込んで送信した。 また、しばらくしてメールが着信した。 「その木曜日はババはいる?」ババとは母のことである。 嫌な予感がした。わたしは、家についてから返信をした。 「木曜、母は施設にいて家にいない」と送信した。 すると、「施設? ついに入所したのか?」と姉からきた。 わたしはカチンときた。 いぜんから、姉にはメールで会話は迷惑だと、なんども書き込んでいる。 「デイサービスを利用していることを二文字の単語にしただけのこと」 「わかった。母はいないのだな?」 「くどい。このメールはこれで終了」わたしはガラケーをパチンと閉じた。 これで姉がなにを相談したいのかわかった。 すくなくとも叔母の葬儀の件ではないのだろう。 すでにそのつぎのことを想像しているのだとおもう。 そのむかし、姉が結婚したとき、花嫁道具として、 母は200万円もする豪華和ダンスを用意した。 が、その8年後、姉は離婚した。とうぜん、嫁ぎ先からでていった。 すると、その豪華な和ダンスは、 置き場がないので叔母の家にずっと置かせてもらい、いまに至る。 姉の魂胆はひとつである。 叔母が亡くなったあとの、 じぶんの和ダンスの確保だけは忘れないで管理してほしい、というものだ。
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