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*** 私が『両親』と会ってから数日。私は退院することになった。消毒液の匂いのしない形だけの病室を出る。 私はほとんどすべての記憶を取り戻しかけていた。もともとどれほどの記憶があったのか定かでないので、全てと言えるのかはわからないのだが。 あの日―――私が『両親』と会った日。 私が「お母さん」と言うと、女の人は安心したようにベットに近づいて来て、私の手を握った。 私を「玲ちゃん」と呼び涙を流した。 その時、私は決めたのだ。 今日は、私が生まれ変わった日。新しい両親に出会った日。今日から私は、桐島玲奈になる、と。 元の私は浅野怜。彼の仕事は完璧でなく、桐島玲奈の記憶とともに、元の私の記憶も戻していた。 いや、消しきれてなかっただけかもしれない。 不本意だろうが、彼の中途半端な仕事のおかげで、私には選択肢ができた。 浅野怜として生きるのか、桐島玲奈として生きるのか。 そして私は決めたのだ。自分の意思で。私も完全犯罪の片棒を担ごうと。 退院する今日、もう会うことのない彼に伝えようと思う。ありがとうございました、と。 彼には、本当の意味はわからないだろう。 すべてを知るのは私だけなのだから。
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