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冷えきった感覚も靴を履いている感触もあるのに、あるはずの足が目に映らない。
ちょうど脛の辺りから輪郭が曖昧になって、薄くなり……足首から下は完全に消えている。
幽霊は足が無いとよく聞くけど……本当に、漫画みたいな消え方するんだ。
こんな状況なのに、笑いそうになった。
ぼんやりしていたら酔っ払いとぶつかってしまった。
バランスを崩した私はよろけたけど、酔っ払いは一瞥もくれずに千鳥足で去っていった。
見えてないんだ、私が。
改めて自分が幽霊だと認識させられて、目の前が眩んだ。
誰にも見つけてもらえないまま、真っ暗な雨の中を見えない足でさまよう。
どうしたらいいのか分からなかった。
(誰か……助けて)
途方に暮れ、泣きそうになったときだった。
私の目に、小さな……あたたかい明かりが映った。
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