いらっしゃいませ

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私の家は代々道具屋を営んでいる。両親がオーナーを務めているが、放浪癖があるのか2人でフラーっと旅行に行ってしまうのだ。そのせいかお姉ちゃんが実質オーナーみたいになってるんだけどね お店を出ると目の前は人で溢れる。それもそのはず、私の家があるここは王都の大通りのど真ん中、人がいなかったら怖いぐらいの場所だ。 人と人との間をすり抜けながら歩く。今日は大通りの市場がやっているせいかいつもより人通りが多い。 「やぁマイちゃん。おでかけかい?」 声のする方を振り返ると見知った顔がそこにはあった。 マイ「あ!ゲンゾウおじさん、こんにちわ!」 ゲン「おいおい…おじさんって言うなよ…俺はまだ30代だぜ?」 無精髭を生やした顎を撫でながらおじさんは苦笑した。ゲンゾウおじさんは通りで鍛冶屋をしている小さい頃からの知り合いだ。お父さんと古い仲らしい。 マイ「あはは、ごめんって。今度包丁研ぎお願いするからさぁ」 ゲン「お、マイちゃんの頼みなら安くしとくぜ?あ、そうだった。帰りにうちに寄ってくれよ。アイちゃんに頼まれてた物、出来たからよ。そんじゃな」 ゲンゾウおじさんはにかっと笑うと人ごみの中に消えていった。 マイ「うげっ、こんな時間か…早く帰らないとまたどやされる」 地図に書かれたお店を目指し、私は走り始めた。 マイ「…………ほんとにココ?」 走り始めて数分、地図に書かれた場所へとたどり着いた。そこにあったのは何ともまぁボロっちい小さなお店だった。壁は蔦で覆われ、窓には大きなクモの巣が。屋根の上にはデカデカと『クロネコ魔法道具店』と書かれた看板が乗っかっている
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