忘れっぽいあなたへ

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 ミステリアスなほうが魅力的だって言ってみたり。  意外に幽霊が怖かったり。  同じ作家の小説が好きだったり。  そんな大好きなあなたの隣にいるべきなのは、私じゃあないのだ。    でも。    ―――忘れないで、欲しかったなぁ。  私と過ごした日々の事を。  二人は、間違いなく共にいたのだという事を。  きっと、お互いに月が綺麗だと思っていた事を。  勿忘草の花束を渡したのは、ただの未練だった。  空を仰ぐ。青空の中を、桜の花弁が泳いでいた。  春は、出会いと別れの季節だ。  なら、こういう別れはありだろう。     「結局、賭けの結果は不明、かな」  病院の入口へと歩く。  「いや」  ふと、勿忘草の淡い香りがしたような気がして。  「賭けは、俺の勝ちだ」  涙が、ころりと流れ落ちた。
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