忘れっぽいあなたへ

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……え?  まあ、そうですね。明るすぎですよね。普通、こんな大怪我をしたら、普通はもっと落ち込むものだって、みんなに言われます。  でも逆ですよ。こんな時だから明るくするんです。病は気からです。  それに、何があっても愛してるって、言ってもらえましたから。まあ、それが嘘か真かは、これから分かることですが。  それが本当か賭けもしてるんですよ。勝ちなのか負けなのかは、知りたいような知りたくないような。  どうでしょう、記憶は戻りましたか?  ……そうですか。少しも戻らないとなると、やっぱり不安でしょうね。  記憶、取り戻したいですか?  ん、まあ、そうでしょうね。それが当たり前ですよね。今後の生活にも関わりますし。お見舞いに来てくれているのに、相手が誰なのかわからないなんて、申し訳ないですしね。    なんだか暗くなっちゃいました。ここは気分転換と行きましょう!  何かしたい事とか無いですか?  散歩? いいですね、今日はいい天気ですし、きっと気持ちいいでしょう。こういう時は、看護師さんに言えばいいのかな?  ちょっと聞いてみますか。ダメだったら……こっそり抜け出しちゃいましょう。  かまいませんよ、気分転換は大事ですし!それに……  え? あ、そう、ですね。記憶を取り戻す切っ掛けになるかも、しれません、しね。  ……  …………  ………………ごめんなさい、やっぱりお散歩はやめましょう。えっとほら、花粉が飛んできそうですし。私、花粉症なんです。ごめんなさい。  お詫びに今度、私のオススメの小説持ってきますから。ね?  ありがとうございます。  それじゃ私、急用を思い出したので失礼します。また今度! ―――  こんばんは。いい夜ですね。  ……月が綺麗ですね。  あ、いえ。何でもないんです。本当になんでも。  それよりも聞きましたよ、もうすぐ退院だそうじゃないですか。おめでとうございます。大変でしょうが、これから頑張って下さいね。私も応援してますから。    どうしたんですか、そんな顔をして。  記憶が戻らない事が、そんなに不安ですか?    ……隣、座ってもいいですか?   ありがとうございます。  えへへ、2人でベッドに腰掛けるなんて、何だかいやらしいですね。
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