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好き。俺が、カイさんを。"like"ではなく"love"として。
だからカイさんの"恋愛対象"に、"男"が除外されているんじゃないかと、気になっている。
筋は、通っている。
(でも、だからって)
時成の言う"条件"だって、それは全て"目的のターゲット"だから、で説明のつく話しだ。それを"好き"だという理由付けにするには、些か強引過ぎやしないか。
そんな考えが顔に出ていたのか、時成は「まぁ、そこも先輩のいいトコではありますけどー」と重々しく溜息をついて。
「これで起爆剤は準備出来ましたからー。あとは次にカイさんに会った時に、先輩が直接確かめればいいだけですー」
「確かめるって、どうやって?」
「会えば、わかりますよー」
「理屈じゃないですからー」とウンウンと頷く時成の視線は、何処か哀れみを含んでいる。
非常に、不愉快だ。
だが今俺が何を言い返した所で、時成は変わらず同じ眼で「ハイハイ」と受け流すだけなのだろう。
それならば。
お望み通り、実際にカイさんと会ってから、その結果を踏まて否定してやった方が効率がいい。
そう判断して「わかったよ」と告げるに留まり、その会話を打ち切る。
どうせ次の予約までまだ暫く日が空く。
その間にどう"敗北通達"をしてやるか、たっぷり考えておいてやろうじゃないか。
こうしてすっかり思考がシフトし、高をくくっていた俺は直ぐに思い知る事になる。
"ピカイチの鈍感さ"という時成の言葉の意味と、待ち受けているのは苦難の数々だという事を。
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