カワイイ俺のカワイイ自覚

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「っ、俊哉、ちょっとストップ!」 「え、え? どうかしたの?」 疑問符を頭上に飛ばす俊哉の腕を掴み、強引に道端へと引きずっていく。 訳がわからない、と呆けた顔で見下ろす俊哉を立たせ、今度は取り出したスマフォで時成に電話をかける。 時成はシフトの無い日でも、この街に居る事が多い。 視線は先程の人物を捉えたまま、祈るような心持ちでコール音を重ねる。 『もしもし、先輩?』 届いたよく知る声に、掴みかかるように言葉を投げる。 「時成、今ドコにいる?」 『今ですかー? アキバの電気街うろついてますけど』 「悪い、ちょっと俊哉頼めるか。駅まで送ってくれればいいから」 『構いませんけど、どうしたんですかー?』 「カイさんを見つけた。多分、だけど、本人だと思う」 『わーお。運命的ってヤツですねー』 「そーゆーのいいから。"Puff Puff"って店わかるか? シュークリームの。あの近くのコンビニに俊哉立たせてるから、回収してくれ」 『らじゃーですー。あ、おれ今日は"あいら"じゃないんで、俊哉さんに一言いっておいてくださいー』 「わかった。頼むな」 これで俊哉は心配ない。 通話を切り、スマフォを鞄へ収める俺に俊哉が「カイさん、いたの?」と周囲を見渡す。 ホームページの画像しか知らない俊哉には、示した所でわからないだろう。 細かい説明は省き、状況だけをざっくりと伝える。 「ああ、俺の勘違いじゃなければな。時成呼んだから、駅まで送ってもらえ」 「時成って、あいらちゃんだよね? そんな別に、一人でも行けるから大丈夫だよ」 「そう言って迷った事が何回あると思ってんだ。もうコッチに向かってるし、直ぐにくるから大人しく待っとけ。ああそれと、今日は"あいら"じゃなくて"時成"だから。間違えんなよ……って、ヤベ」 捉えていた人物が諦めたように列から離れ、人波に消えていく。
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