カワイイ俺のカワイイ自覚

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(そういえば、カイさんの私服って初めてみた) 表情ばかりに気を取られていたが、今までのエスコートは全て店のギャルソン服だった。 こうしたラフな服装はレアである。 それも、"私服"と選択したエスコート時とはまた状況が違う。 オフで、カイさん自身が好んで着用している服。 急に気分がソワつき、そしてそれを悟られないよう慎重に自然を装う。 「カイさんも、普段からそーゆー感じですか?」 訊いた俺に、カイさんは肩を竦めて。 「うん。身長あるし、こーゆーのじゃないと似合わないから」 女性らしいデザインは似合わない、と言いたいのだろう。 諦めたような物言いに、そうだろうかと真っ白なワンピース姿のカイさんを思い描く。 肩の出るシンプルなデザイン。 たっぷりとした丈のスカートが悪戯に遊ぶ海風に舞い、スラリと伸びる白い足に代わる代わる影を落とす。 踊る黒髪から除く細い項。 見つめる俺に気づき振り返って微笑む彼女は、真夏の日差しを柔らかに受け止める。 (って、何考えてんだよ!!!!!?????) 少女漫画よろしくフワフワとした効果で縁取られた映像を急いで打ち消す。 ヤバイ。よくわからないが、ヤバイという事だけはわかる。 「……そんな事ないです」 思考は悟られたくないが、本人が思っているよりも魅力的だという事は伝えたい。 そんなせめぎ合いの中なんとか絞り出した一言に、カイさんは「ユウちゃんは、優しいね」といつもの柔和な笑顔を見せる。 気遣いだと、思ったのだろう。それかお世辞。 決してそうではないのだが、これ以上言葉を繋ぐと、余計な事まで悟られてしまいそうだ。 (……くそ) その時その状況に見合う言葉を選び、相手を掌握する。 それが"ユウ"の武器で、"瀬戸悠真"の鎧でもある。 それなのに、ココ最近カイさんの前ではちっとも機能しやしない。
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