カワイイ俺のカワイイ自覚

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「……反則だろ」 カイさんの笑顔にか、それとも邪な計画で裏切っている自身にか。 零した言葉はやけに大きく、耳から脳へと伝わっていく。 少し前のカイさんなら、俺を出し抜くような行動をした時は"してやったり"と言うような顔をしていた。 だけど、先ほどのあの笑顔は違う。 警戒心などまるでない、裏なくただ言葉の通り、次の会合を待ち望んでいるだけの。 「……」 いつになく重い腕で、スマフォを取り出し発信履歴から一番上の番号を押す。発信を示す文字を押して、耳元へ。 一回、二回。 コール音が途切れて、数秒の空白。 『……先輩』 『そろそろかかってくるかなーって思ってましたー』と繋げる時成の声は明るいが、俺への心配が多分に感じ取れる。 『今、ドコですかー?』 「……前に話した、ベンチんトコ」 『了解ですー。五分ちょっとくらいで着きますから、大人しくそこで待機しててくださいー』 「……わかった」 いつもなら、「俺はお前の飼犬か」とすかさず返していただろう。 今はそんな余裕もない。 時成もわかっているのか、特に何を言うでもなく通話が途切れる。 宣言通り、さほど待ったと感じない内に現れた時成が俺の横に座る。 肩より下の長い黒髪は纏めることなくおろされ、襟ぐりの広いカットソーからはタンクトップが覗き、七分丈のズボンから女性とは違った細さのふくらはぎと引き締まった足首が伸びている。 "今日は時成"の宣言通り、珍しく男の服装。 化粧も眉を整えた程度だが元から中性的な顔立ちをしているため、事情を知らない人から見ればバンド系男子か、ボーイズライクな服装が好みの女子に見えるだろう。
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