カワイイ俺のカワイイ自覚

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「俊さんはちゃんと駅まで送り届けましたー」 「悪いな、急に呼びつけて」 「いえー。"カイさんとオトモダチになろうプロジェクト"の一員としてお役に立てて良かったですー」 「……」 "カイさんとオトモダチになろうプロジェクト"。 その言葉にツクリと傷んだ胸。 沈黙した俺を促すように、時成が「それで」と言葉を続ける。 「どうでした、って、その顔は聞くまでもないですねー」 呆れたような、労るような。 そんな顔をした時成から視線をそらし、目の前に続くアスファルトを見つめる。 反射された日差しが目に入り、少し、染みる。 「……俺は、俊哉との約束を破るつもりはない」 「……」 「何も、変わらない。計画通り、カイさんとは"オトモダチ"になれるよう、頑張る」 最優先は、変わらない。 そう、言い聞かせるような宣言をした俺に、時成が小さく吹き出す。 「ほーんとユウちゃん先輩って、意地っ張りっていうか真面目というか。まー、そこが良いんですけどー」 小馬鹿にするようなニュアンスに、ムッと横目で時成を睨む。 「すみませんー」と言いつつも、一切悪びれた様子はない。 むしろ、駄々をこねる子供を見るような、そんな顔で俺を見る。 「先輩は、経験がないんだと思いますけどー。"好き"って気持ちはそー簡単に消す事も、抑える事も出来ませんよー」 「お前は経験があるのか」。そう、問いかける前に、時成は真剣な眼で俺を見つめる。 「カイさんのコト、好きなんですよね?」 「っ、そうだよ」 「ダメです。ちゃんと、"好き"って言ってみてください」 「な、」 詰まる俺にも時成はニコリともせず、ただ、真っ直ぐに捉え続ける。 いつもの間延びした口調もドコへやら。 それだけ時成が真摯に向き合ってくれているのだと、目で、耳で、理解する。
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