カワイイ俺のカワイイ自覚

18/21
前へ
/238ページ
次へ
喧嘩の仕方が舌っ足らずの幼少期から変わっていないのだ。 無視する俊哉にひらすら謝り続けて、"もう勘弁してくれ"と俺が心から音を上げるタイミングで、見計らったかのように許される。 大体、期限付きの絶交って何だと言ってやりたいが、そうなれば更に面倒な事になりそうで、言えないままでいる。 その、俊哉だ。 俺がカイさんへの気持ちに蓋をして接触を続けた時点で、核心までは辿り着かなくとも俺の変化には気付くだろう。 そしてきっと今回は、自身をないがしろにした俺への叱咤では済まない。 "きっかけを作ったのは自分"だ、と。 俊哉自身を責め続けるだろう。 下手すれば一生、許さずに。 「……」 想像して、そんな簡単な事すら忘れていた自身に、嫌気がさす。 結局、全て俺が悪い。 何が何でも、少なくとも目的の達成までは、"好き"になんてなってはいけなかった。 けれど、もう遅い。 時成の言う通り、自覚してしまった今、無かったことには出来ない。 とはいえ俊哉を傷付ける訳にも、由実ちゃんを悲しませる事もしたくない。 「……俺は、どうしたらいい」 グルグル回る思考の渦に酔いそうだ。 弱々しく零した俺に、時成がニヤリと笑む。 「何言ってるんですか、先輩。簡単じゃないですか」 腕を組んで不敵に見下ろす時成に、嫌な予感。 「オとしたらいいんですよ、カイさんを。"オトモダチ"じゃなくて、"コイビト"になっちゃえばいいだけです」 「なっ!?」 「"コイビト"になってしまえば先輩も幸せ、俊さんも安心。由実ちゃんも予約なんて気にせず会えて皆がハッピーですー」 名案だ、とでも言うように両手を上げてみせた時成に、開いた口が塞がらない。 何を言っているんだ、と思う一方で、確かにそれしか道がないと納得する自身もいる。
/238ページ

最初のコメントを投稿しよう!

145人が本棚に入れています
本棚に追加