カワイイ俺のカワイイ自覚

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「邪気のない先輩の笑顔なんて貴重すぎて……! いつでも拝めるように! 写真に収めさせてくださいーっ!」 「……ぜってぇヤダ」 「なんでですかヒドいですー!」 喚く時成に「つーか邪気ってなんだ。俺はいつでも"カワイイ"笑顔だろーが」と片眉を上げれば、「カワイイはカワイイですけど純粋なのはほぼ皆無じゃないですかー」と食い下がられる。 ったく、酷いのはどっちだ。 (ま、その通りだけどな) だからと言って、所望の"純粋な"笑顔は「さぁやってください!」と言われて出来るモノでもないだろう。 全く取り合わない俺に時成が「わかりました……写真がなくともおれの記憶にバッチリ保存してますからー……。心の中で拝みますー」と渋々言うので、「拝むな」と即座に拒絶する。 今まで撮られていた(隠し撮りが多いが時成は撮る度に申告してくる)写真も拝まれているんじゃないだろうな、と疑惑が浮かぶが、その辺りの追求はまた後日に、だ。 「ともかく」と。仕切りなおして時成を横目で見遣る。 言葉にするのは些か照れくさいが、ここはキッチリしておかなければ。 「"カイさんとオトモダチになろうプロジェクト"改め、"カイさんをオトそうプロジェクト"の一員として、協力よろしくな」 「勿論ですー!」 「任せてくださいー」と自身の胸元を片手で叩く時成の、嬉しそうな笑顔。 その顔に救われる思いを抱きながら、カイさんの姿を思い浮かべる。 あの人は俺が抱えた想いなど知らない。 すみません、と反射で浮かんだ謝罪は、心の中で。 気の合う"客"だと、思っているのかもしれない。 "妹のよう"、かもしれない。 けれども"ユウ"としてだけではなく。 "俺"として、あなたの隣が欲しい。
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