カワイイ俺のカワイイ調査

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それと。 最重要課題であった俊哉への謝罪だが、電話口ではなく直接告げるべきだろうと、あの日の夕方に俊哉の暮らすアパートへと出向いた。 俊哉の通う大学からは徒歩圏内。 閑静な住宅街に佇むそこは、一DKの部屋が六室からなる二階建ての古き良き外観にもかかわらず、内装はリフォームしたてだとかで随分と真新しい。 その二階の、一番奥。 「話があるから、今から行く」と電話を入れた時点で、何か感じるものがあったのだろう。 ドアのチャイムを鳴らした俺を迎え入れた俊哉は、いつも以上に落ち着いた顔をしていた。 「ゴメンね、お菓子とか全然買わないからお茶くらいしかなくって。あ、冷凍してある煮物があるけど、食べる?」 「いや、いい。明日は一限からだし、夕飯は帰ってから食うわ。母さんが送ってきた惣菜もまだ残ってるしな」 「そっか。あ、シュークリーム。喜んでたみたいだよ」 「ああ、ありがとな。親父からもニコニコマークの顔文字が送られてきた」 「ハイ」と渡された麦茶入りのグラスを「サンキュ」と受け取る。 ヒンヤリと伝わる冷たさが、緊張に火照る手の内に丁度いい。 「……たまには帰ってあげたら? おばさん、ちょっと寂しそうだったって母さんが言ってたよ」 告げる俊哉に、そういえば最後に帰ったのはいつだったかと記憶を辿る。 電話やメールのやり取りはしてるものの、直接顔を見て話したのは数ヶ月前だったか。 「……そうだな」 返しつつ、「ま、向こうが中々捕まらないんだけどな」とボヤく。 不規則過ぎるのだ、あの二人は。 俊哉もわかっているからこそ「おじさんもおばさんも、昔から変わらず元気だね」と肩を竦める。
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