カワイイ俺のカワイイ調査

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いつの間にお前はそんな策士になったんだ。 ニコニコと朗らかな笑顔を浮かべる俊哉に突っ込みを入れつつ目を見張る。 本人にその意識はないのかもしれないが、俺からしてみれば完璧な"一本"だ。 してやられた。 ズシリと重くなる頭を支えるように額をおさえた俺に、俊哉が静かに「良かった」と呟く。 「……何が?」 「悠真がちゃんと、カイさんが好きだっていう気持ちを大事にしてくれて」 「っ」 「上手くいくように、応援してるから」。そう微笑む俊哉の顔に、微かな既視感。 (……あ、) 嬉しさだけではない、どこか寂しさが混ざり合った表情。 重なるのはあの日俺を呼び止めた、夕焼けを背にした拓さんの。 「……」 もしかしたら。 拓さんも吉野さんのように、俺がカイさんに抱いた恋情を感じっとっていたんじゃないだろうか。 けれどあの時点で、俺はまだ自覚していなくて。 水面のように揺れ動く不確かな好意を興味本心の"不誠実"ではないかと疑い、ああしてカイさんを"守る"ために"忠告"に来た。 全部、俺の憶測でしかない。 だがそう考えると、辻褄が合う。 「……俺、ちゃんと本気だから」 ポソリと宣言した俺に、俊哉が「うん、わかってるよ」と笑む。 本当は、拓さんに伝えたい所だが、憶測のまま先走る事も出来ない。 "客"とのトラブルはご法度。 それは似通った業種全てにおける、暗黙のルールだ。 その中に身をおく者として、自ら暴露するなんて初歩的なヘマはしない。 後はもう、感じ取って貰うしかないな、と。 改めてカイさん攻略への気持ちを固め、俊哉への報告を無事終えたのである。 余談だが、時成には「騙してたな」と一言メールを飛ばしたが、即座に必死の弁解電話が来たので許すことにした。 (知ってしまえばカイさんと出会うコトもなかったという俊哉の意見にも一理あるし)。 それと。この時ばかりは"ユウ"の俺を"悠真"と呼ぶ俊哉にも、目を瞑る事にした。
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