カワイイ俺のカワイイ調査

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ともかく俺は準備万全。 あとは本当の意味でカイさん攻略に向け、前進あるのみである。 (って、言ってもな……) 問題はどうやって、探りを入れるかだ。 『あんまり公にはしてないんですけど、実は僕、恋愛対象は女性なんですよ』 『そうなんだ? ユウちゃんカワイイし、彼女もカワイイんだろうね』 『やだなー、彼女なんて居ませんって。 そういうカイさんはどうなんです?』 『ああ、オレは--』 (って、そんな上手くいかねーよなぁ) 脳内で繰り広げられる茶番劇を振りはらう。 と、突如大きく吹いた風にスカートと髪がバサリと翻る。 「わっ」 慌てて手で抑えると、次のタイミングを伺うように穏やかになった風。 ったく、勘弁してくれと内心で毒づいて、とりあえず髪は片側に纏めて寄せる。 何度も吹かれ乱れた髪はきっとボサボサだろう。 吉野さんの店についたら結んでしまった方が賢明かもしれない。 そう思うのに、いやまだイケるか? と考えてしまうのは、いくら以前カイさんに問題ないと言われていても気乗りしないからで。 (……重なるモンだな) 胸中に溜まるモヤモヤを吐き出しながら、またいつ強く吹くかもわからない強風に備え手にした鞄を後方に回し太腿付近を覆う。 これで後ろがめくれ上がる心配はなくなった。 が、本来前後に振られるべき両腕を後方に固定している事に加え、歩を進める度に鞄がバシバシと腿を打ち、なんとも歩き難い。 別にいいんじゃないか、どうせ見えてもいいようにと下に履いてるし。 諦め半分、吹っ切れ半分で思案していると、不意に立ち止まったカイさんが「ちょっとゴメンね」とカーディガンを脱ぐ。 暑い、のだろうか。 同じく風に煽られただろうに、見るも無残な俺とは違いカイさんはまるで不調を感じさせない。
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