カワイイ俺のカワイイ調査

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「もし良かったらなんだけど、今日のオーダーは無しにしてウチの新作食べてみてくれない? 勿論、料金はいらないから」 軽く飛ばされたウインク。 面食らった俺の対面で、カイさんがピクリと肩を揺らしたのが目端に映る。 チラリと窺えばその表情には確かな不愉快。 今日は随分と表情が豊かだな、と口元を隠しながら小さく吹き出して、「是非。お願いします」と頷く。 「いいの? ユウちゃん。来たいって言ってたくらいだし、食べたいのあったんじゃない?」 気を使っている、と思ったのだろうか。 すかさず言葉を発したカイさんは先程の顰めっ面とはうって変わり、心配そうに俺を見つめる。 ここならカイさんの気が緩むから、なんて本音は当然言える筈もない。 「いえ」と肩を竦めて、笑顔で返す。 「特別そういうワケじゃなくて、このお店の雰囲気が気に入っちゃて。それに、どれも美味しいですし、新作すごく気になります」 「やっだユウちゃん嬉しいコト言ってくれるじゃないー! よし! 飲み物もサービスしちゃう!」 「え、いや、流石にそこまでは……」 「こーゆー時は"ラッキー"ってノッておくものよ! ハイ、ご注文は?」 意気揚々とオーダー用紙を取り出し構える吉野さんに、どうしたものかとカイさんへ視線を流す。 と、「諦めて」というようにユルリと首を振られる。 「こうなったら聞かないから。オレはコーヒーのホットで、ユウちゃんは?」 「カイさんがそういうなら……お言葉に甘えて。紅茶のホットでお願いします」 「あんたらいっつもホットねー。 暑くないの?」 「個人の好きずきだろ。ほら、時間もないんだから、もう行って」 「あ、そっか。ほんじゃ少々お待ち下さいね!」
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