カワイイ俺のカワイイ調査

20/32
前へ
/238ページ
次へ
「最初は乗せようと思ったんだけど、ウチのお客様って女性が多くてねー。ほら、女だとカロリーとか気にする人も多いじゃない? メープルをボトルで提供するには保存も大変だし、ならバターかなって」 「なるほど……。でも個人的には、熱々の生地に染みこんだバターもフレンチトーストの醍醐味だと思うんですけどね……」 「わかる~! あたしも染み染み派。だからあたしとかユウちゃんみたいに染み込ませたい! って人にはちょっと申し訳ないんだけどねー」 「うーん……」 何か他の手はないだろうか。 考えながら目に留まったのは、置かれたミルクピッチャー。 「……あ、アレとかどうです?」 「ミルクピッチャー?」 「はい。バターは真ん中のヤツにだけ乗っけて、メープルはミルクピッチャーで別添え。それなら甘さも量も調節出来るんで個人の好みで変えられますし、一回使いきりなので保存の心配もいらなくないですか?」 「確かに……!」 「それに、この形なら注ぎ口から垂れても手は汚れませんし。傾けるついでに自慢のネイルも見せれて、会話も弾むと」 「やっだユウちゃん。それ採用」 目を光らせながらズビシと指を向ける吉野さんに、思わず「ええ!?」と肩を跳ね上げる。 「イヤイヤ、検討くらいにしといてくださいよ。損益も気にしないただの思いつきなんですから」 「いやー中々名案だったわ今の。ミルクピッチャーなんていっつも目にしてるのに、こーゆー時見逃すんだから、あたしもまだまだね」 「そんな……」 「さて、と」 カチャリ、と置かれたのは二枚の取り分け皿。
/238ページ

最初のコメントを投稿しよう!

145人が本棚に入れています
本棚に追加