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「最初は乗せようと思ったんだけど、ウチのお客様って女性が多くてねー。ほら、女だとカロリーとか気にする人も多いじゃない? メープルをボトルで提供するには保存も大変だし、ならバターかなって」
「なるほど……。でも個人的には、熱々の生地に染みこんだバターもフレンチトーストの醍醐味だと思うんですけどね……」
「わかる~! あたしも染み染み派。だからあたしとかユウちゃんみたいに染み込ませたい! って人にはちょっと申し訳ないんだけどねー」
「うーん……」
何か他の手はないだろうか。
考えながら目に留まったのは、置かれたミルクピッチャー。
「……あ、アレとかどうです?」
「ミルクピッチャー?」
「はい。バターは真ん中のヤツにだけ乗っけて、メープルはミルクピッチャーで別添え。それなら甘さも量も調節出来るんで個人の好みで変えられますし、一回使いきりなので保存の心配もいらなくないですか?」
「確かに……!」
「それに、この形なら注ぎ口から垂れても手は汚れませんし。傾けるついでに自慢のネイルも見せれて、会話も弾むと」
「やっだユウちゃん。それ採用」
目を光らせながらズビシと指を向ける吉野さんに、思わず「ええ!?」と肩を跳ね上げる。
「イヤイヤ、検討くらいにしといてくださいよ。損益も気にしないただの思いつきなんですから」
「いやー中々名案だったわ今の。ミルクピッチャーなんていっつも目にしてるのに、こーゆー時見逃すんだから、あたしもまだまだね」
「そんな……」
「さて、と」
カチャリ、と置かれたのは二枚の取り分け皿。
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