カワイイ俺のカワイイ調査

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「とはいえ、やっぱり原価計算は必要ね! ユウちゃんの忠告通り、ちゃんともう一回確認するわ。ありがとね」 「ごゆっくりー」と片手を振り去って行く吉野さんの後姿を見送って、俺は再び目の前のプレートに視線を移す。 と、視界に現れた銀色の持ち手が二つ。 その先を辿ると、申し訳なさそうな表情を浮かべるカイさん。 「ホント、ごめんね。楽しんでもらわなきゃなのに……。話も途中で切っちゃったし」 "話"というワードにピクリと反応するも、シルバーを受け取りながら「平気ですよ」と笑顔を向ける。 「大したコト言おうとしてたワケじゃないんで」 あの時、俺は何を言おうとしていたのだろう。 勢いに任せて、"目的"を軽くすっ飛ばした内容を紡ぎそうになっていたのは明らかだ。 ただの"暴走"は何も生まない。 気をつけないと、と気を引き締めて、顔ではへらりと笑ってみせる。 「それに、吉野さんの事も好きですし。十分楽しいですよ」 偶然とはいえ止めてくれた吉野さんに感謝をしつつ、メープルが皿の縁に垂れ落ちないようタイミングを見計らって小皿へと一枚乗せる。 カイさんは甘党だったしな、とバターを乗せ、フルーツも多めに添えて「どうぞ」とカイさんの前へ。 「……ありがと」 ぎこちない声。 「あ、もしかしてバター乗せないほうが良かったですか?」 訊いた俺に、カイさんは「え? あ、ううん、乗せる派だから、大丈夫」と首を振る。
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