カワイイ俺のカワイイ調査

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「これ、忘れてました」 これ、とは腰に巻いていたカイさんのカーディガンだ。 すっかり忘れていたと慌てて取り外そうとすると、いつの間に近寄っていたのか、耳横にカイさんの気配。 「駄目」 「っ!」 囁かれた距離に、大げさに肩が跳ねる。 緊張と驚愕に止まる手。 それに満足したのか、すっと遠のいた気配を追うように、視線を上げる。 「家、ついたら外していいよ。それは好きに処分して」 「っ、そ、んな」 「またね、ユウちゃん」 手を振って、カイさんは今後こそ背を向け歩き出す。 丁度フロアの反対側から戻ってきた吉野さんに片手を上げ、足を止めることなく一言だけ告げると、店の扉を開ける。 カランと響く乾いたベルの音。 呆然と立ちすくむオレへと投げられた視線。 「っ」 ふわりと穏やかに瞳を緩めて、唇が言葉を作る。 『きをつけて』、だろう。 最後にもう一度涼しげな笑みを作ると、扉の向こうに消えていく。 魔法の解ける合図のように、再びカランと揺れるベル。 こちら側のフロアに居た数人の女性客達が、頬を染めて色めき立つ。 「……ああー、もう」 へたりと力なくソファーへ座り込み、机に両手をつき額を乗せる。 あんなの、反則だ。 俺の顔は見事に真っ赤だったに違いない。 触れてしまいそうな距離も、意図的に落とされた"全力"の声も。 そして最後に向けられた"あからさま"な表情も、どれをとっても"完璧"で、実に現実味のない"夢"の集大成である。
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