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「ユウちゃん……」
戸惑うような吉野さんの声。
(なにしてんだ、俺)
時成と俊哉に寄りかかって、更には吉野さんにまで迷惑をかけるつもりか。
どれだけ情けないんだと、奥歯を噛み締めた瞬間。
「もう! よくない! そーゆーの! よくないわよ!」
突如両頬が掌に包まれ、グイッと力任せに顔を上げられて「んう!?」と妙な声が出る。
「吉野さんっ」眼前にはちょっと怒ったような、吉野さんの顔。
「いーい!? 昔っから"当たって砕けろ"って言葉があるでしょ!? 本気なら、怖がってちゃダメ。断られたらその時は、縁がなかったってだけなんだから。気持ちにウソついて、押し込めて……そんなんじゃいつまで経っても、苦しいだけよ!」
「吉野さん……」
「それに、あの子が気づかない保証だってないでしょ? 気持ちを告げる前に終わっちゃう可能性だってあるわ。そしたらいつまでも"言っておけばよかったな"って、前を見れないまま過去に縋り続けちゃう。まだまだ先に沢山の可能性があるのに、何も見えなくなっちゃうの。……そんなの、悲しいじゃない」
辛そうに顔を歪める吉野さんの脳裏には、何が浮かんでいるのだろう。
返す言葉が見つからず、困惑したままただ見つめ続けていると、吉野さんはハッとしたように両手を放し「ヤダ! なんか熱くなっちゃった!」と空笑いする。
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