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「ともかく、人生は一回きりよ! 悔いなくね!」
「……この流れはなんかもう、当たって砕ける前提ですね」
「骨は拾ってあげるわ!」
いつもの明るい顔でぐっと親指を立てる吉野さんに、「ありがとうございます」と苦笑する。
時成も、吉野さんも。
きっと今まで、俺には想像がつかないような恋をしてきたのだろう。
もし、見えない糸とやらがあるのなら、こうして背を押してくれる人達との縁を繋いでくれているのは、"必要"だからだと信じていいのだろうか。
(都合良すぎ、か)
何考えてんだと心中で自嘲して、「よしっ!」とペチリと頬を叩く。
「弱気はダメ、ですね。腹くくって当たるタイミングを探します」
男は根性。そんな言葉を聞いたのは、中学の体育祭だったか。
ハッキリと宣言した俺に、吉野さんが安心したような顔で頷く。
……そうえば。
吉野さんなら、カイさんの恋愛対象くらい、知っているんじゃないか?
「……吉野さん」上目遣い気味に小首を傾げた俺に、吉野さんは不思議そうに「なぁに?」と言う。
「吉野さんって、僕のコト応援してくれてるんですよね?」
「そうよー? どうしたの、改まって」
「僕って、女装してるけど別に女性になりたいワケじゃなくって、好きになるのも女性だけなんです。で、カイさんって、その、男装されているけど、女性じゃないですか。カイさんって、男性が好きなんですか? それとも……」
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