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「まっ、恥ずかしがり屋なのもカワイイんだけどねー」
そんな俺達のやり取りなど気づかないまま、メニュー表を広げた拓さんが頬杖をつく。
写真を順に指でさし、視線はメニューを追ったまま。
「あんまりのんびりしてると、チャンスを逃しちゃうよ」
「……え?」
届いた言葉に、思わず訊き返す。
「……どういうコトですか?」
なんだか嫌な予感がする。時成と俊哉も、驚愕に見開いた目で拓さんを凝視している。
漂う緊張。
そんな中でただ一人、拓さんだけはいつもと変わらない調子で「んー?」と口角を上げ、悪戯っぽく両目を細めて俺を見る。
「"恋煩い"のお相手って、カイでしょ?」
「っ!?」
息を呑んだ俺の斜め下で、時成が目をパチクリさせる。
「拓さん、ご存知だったんですかー……」
「あ、ホントにビンゴ? 三割は冗談だったんだけど」
「っ、あいら!」
「やば、すみません先輩」
時成が慌てて両手で口を覆うも、"時既に遅し"だ。
即座に否定出来なかった俺も悪い。今のでは肯定したも同然である。
予感に、心臓がバクリバクリと騒ぎ立てる。
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