カワイイ俺のカワイイ危機感

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(知られてしまった) もう店に来るな、と言われるのだろうか。 顔が強張るのが嫌でもわかる。 何も言えないまま見つめる先で、拓さんはふっと目元を緩めると、またメニュー表へと視線を移す。 「そんな顔しなくていいよ。別に、"お客様に惚れられるな"なんてルール、ウチの規約に明記されてないしね」 「っ」 「今んとこ、カイからユウちゃんの"ルール違反"の報告もないし。よってユウちゃんは変わらず、大事な"お客様"だよ」 コツリと指先でメニュー表のパンケーキを指さし、「コレ、追加でよろしく」と笑顔を向ける拓さん。 戸惑いながらもオーダー用紙を取り出し記入してしまうのは、もはや条件反射だ。 「……あの、カイさんには」 「言わないよ。オレは傍観主義者だからね」 差し出されたメニュー表を受け取るも、俺の顔は疑念に満ちていたのだろう。 「信用ないなぁー」と苦笑した拓さんに、慌てて「いえ、そういうコトじゃ」と返す。 「けどまっ、オレが言わなくたって、カイが気づくかもだしね。実際、ユウちゃんの"好き好きオーラ"駄々漏れだし。それでオレも、もしかしてって思ったワケだし」 「"好き好きオーラ"って……。そんなに、漏れでてます? カイさんに気づかれたくないんで、その、隠してたつもりなんですけど……」 声を潜め、戸惑いがちに尋ねる俺に、拓さんが目を丸くする。
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