カワイイ俺のカワイイ危機感

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「え、あれで? まぁ、カイも自分のコトになるとニブチンだからねぇ」 「そうなんですか? 以前、吉野さんから"上手く避けてる"って聞いたんですけど……」 「ああ、やっぱり里織ちゃんも突っついてたんだ。そうそう、コト"お客様"がどう見てるかに対しては敏感だよ。ただそこに、あの子自身の"私情"が入ってくると、どうもそっちに気が取られちゃうみたいでねー。臆病なんだろうね、基本的に」 拓さんは薄く笑うと、ジンジャーエールが入るグラスのストローを指先で回す。 (臆病……? カイさんが?) 俺の困惑などお構いなしに、近しい距離に踏み込んでくるのはいつだってカイさんで、分かっていながら惑わすような顔を向けてくるのも、カイさんのお得意技だ。 これのどこを、臆病だというのか。 それとも、俺は大切な部分を、見落としているのか。 「……ユウちゃん先輩」 控えめな時成の声に、はっと意識を手繰り寄せる。 「オーダー、キッチンに届けないとですー」 「あ……そうだな」 思わず"ユウ"ではない、俺の口調で答えてしまうも、気づかないまま頭を下げてキッチンへと向かう。 オーダーを告げ、デザート用のカラトリーを用意するも心はすっかり上の空。 そんな俺を戒めるように響いたベルの音が来店を告げるモノだと気付き、扉側へと顔を跳ね上げる。
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