145人が本棚に入れています
本棚に追加
背にした茜空を反射して、濃いあかに染まるオレンジベージュの髪。
丁寧なカールをつけた睫毛が縁取る目元を細め、真っ赤な唇で綺麗に弧を描くひとりの女性。
「レナさん」
「久しぶりね、ユウちゃん。会いたかったわ」
前回の来店は十日ほど前だったか。
「暫く忙しくなるの」と残念そうに呟いたレナさんは言葉通り、その日以来、姿を見せなくなっていた。
「お仕事、落ち着いたんですか?」
「ええ、なんとか。早く時間を作りたくて、少し無茶してしまったけど」
「大丈夫ですか? やっと取れた時間なら、お家で寝てたほうが……」
「アラ、ユウちゃんはアタシが来て迷惑だった?」
「まさか。お会いできて嬉しいですよ」
「アタシもよ。寝ているよりも、こうしてユウちゃんに会った方が、力になるの」
案内した席に腰掛け、胸元を強調するように机に両腕を乗せたレナさんは「本当よ?」と俺を見上げる。
ああ、なんか大丈夫そうだな。
以前と変わらないレナさんに「そう言ってもらえると、嬉しいです」と笑顔で返す。
メニュー表を渡して一旦下がり、お冷とお絞りを持って再びレナさんの元へ向かう。
軽い談笑を交えつつ、受けたオーダーはパンケーキプレートとコーヒーだった。
「では、少々お待ち下さい」
「もう行っちゃうの?」
来れなかった間の分を取り戻そうとしているかのように、レナさんの話題は次から次へと溢れ出てくる。
最初のコメントを投稿しよう!