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聞いてあげたいのは山々だったが、お客様はレナさん一人ではない。
「レナさんのオーダーを告げにいかないと」
「まだいいわよ」
「別の方の料理も出来上がったようなので……。また、来ますから」
丁度よく鳴り響いたベルの音に、レナさんが少しだけ眉をしかめる。
「……仕方ないわね」
重々しく息を吐き出したレナさんに「スミマセン」と苦笑を返し、軽く頭を下げてパントリーへと向かう。
女性は話し好きなモノだと理解はしている。
そしてそれは、時にストレス解消の手段となっている事も。
ここ最近は仕事に追われていたせいで、そうした場も取れていなかったのかもしれない。
(……社会人って、大変そうだな)
遠くはない自身の未来が重なり、レナさんに同情心が湧く。
出来上がっていた料理は予想通り、拓さんの注文したパンケーキプレートだった。
因みに拓さんはこの注文の前に、既にオムライスプレートを平らげている。
「お待たせいたしました、パンケーキで」
「っせんぱい! きっぽうですー!」
辿り着くやいなや、興奮気味に見上げてきた時成に思わず半歩後ずさる。
「あぁ~オレのパンケーキがぁ~」悲しげに手を伸ばす拓さん。
「っ、スミマセン!」
慌ててプレートを置くと、時成は無視をされたのが不満だったのか、ぶぅと口を尖らせながら「先輩せんぱいー!」と机を叩き続けている。
他のお客様に迷惑だから、やめなさい。
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