カワイイ俺のカワイイ危機感

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「……なに?」 「先輩! どうやら先輩の地道でけなげーなアタックがジワジワと効いてきているというか」 「バッ、おま、もう少し声落とせ」 「あ、すみませんついー」 時成は胸に手を当て「ふぅ」と息を吐き出すと、俊哉と拓さんに目配せをしてそっと声を落とす。 「カイさん、脈アリかもですよー」 「……は?」 「先日、"カーディガンふぁっさぁ"事件があったじゃないですかー」 「借りたやつな」 「どうやら拓さんによるとー、カイさんがそーやって私物をお客様に渡すの、初めてみたいですよー」 「そ、なのか?」 「ハイ、拓さんどうぞー」 マイクを向ける記者のように時成に拳を向けられ、パンケーキを頬張っていた拓さんは「えー照れるなー」と首筋に手をあてはにかむ。 ノリノリかよ。 「いやー、実を言うとそうなんですよね~。正確に言うと、ティッシュくらいなら渡してた事あるんですけど、ああやってガッツリ"私物"を渡してくるのは初めてっていうかー」 「そのカーディガンがティッシュと同列とは考えられませんかー?」 「それはないと思いますよー。だってアレ、お気に入りって言ってましたし。それを"あげる"なんてありえませんよ。まっ、結局手元に戻ってきたんですけど、そん時なんて、"いいって言ったんですけど"とか言いながらも、嬉しそうにしてましたからね」
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