カワイイ俺のカワイイ危機感

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「お待たせしました」 「待ってたのよ、ユウちゃん」 俺が皿やらスプーンやらを置いている間にも、待ちきれないといった様子で、赤い唇を釣り上げたレナさんがせきを切ったように話しだす。 失敗した後輩の後始末をしたことや、プレゼンが客先で高評価を受け上司に食事をご馳走されたとか、内容はおおよそ俺の想像出来る範囲を優に超えていた。 「そうですか」「大変でしたね」といったありきたりな相槌しかうてなかったが、レナさんはそれでも嬉しそうにしていた。 そろそろ一旦、離れないとかな。 そう思った矢先、ふとレナさんの声色が沈む。 「……あの席の」 「はい?」 「あいらちゃんがいる、あの席。仲いいの? 一緒にいる人達」 まさか、拓さんとか時成がチラチラこっち見てたんじゃ。 「あ、あいらの隣は僕の親友で。向かいは、共通の知り合いです」 友人、と言うには些か憚れるので、拓さんは知り合いという言葉で誤魔化す。 「スミマセン、ご迷惑おかけしましたか?」と尋ねた俺に、レナさんは「いいえ、平気よ」と悠然と微笑んだ。 「ちょっと、気になっただけ。ごめんなさい、変な質問して」 「いえ、それなら良かったです」 「知り合いさん、素敵な方ね」 「カッコイイですよね。あ、もしかしてレナさん、ああいう感じがタイプなんですか?」 だから気になったのだろうか。 小首を傾げた俺に、レナさんは驚いたように目を見張ると、心底可笑しそうに吹き出す。
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