カワイイ俺のカワイイ危機感

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「そう。ユウちゃんは、そう思うのね。素敵だとは思うけれど、それだけよ。それにあの人、女性でしょ?」 「え?」 今度は俺が目を丸くする番だ。 言ってもいいのだろうか。 戸惑いながらも「……どうしてそう思うんです?」と返した俺に、レナさんはにぃっと瞳を細める。 「女はね、わかるモノよ」 そう、なのか。 たじろいだ俺にレナさんはクスクスと笑うと、コーヒーの入るカップを傾ける。 レナさんは常にブラックだ。 砂糖もミルクも一切入れない。 質問の答えは特に必要としていなかったようで、レナさんが拓さんの話題を出したのはそれきりだった。 ディナータイムが近づくにつれて客足も増えていき、対応に追われているうちに、レナさんは帰っていった。 「今日は沢山話せて嬉しかったわ。また来るわね」そう微笑んだレナさんの雰囲気に、微かなひっかかりを覚えたのは、気のせいだったのかもしれない。 拓さん達が帰っていったのは、レナさんが帰った十五分ほど後だった。 「やっぱここはオレが奢らないとね」 財布を手にした時成と俊哉を強引に店外へ押し出し、拓さんはポケットから財布を取り出す。 「良かったんですか?」 「ドリンク二杯じゃ足りないくらい、面白い話しを沢山聞けたしね。主にユウちゃんの」 「……」 アイツら一体何を話したんだ。 剣呑に細めた瞳に思いっきり吹き出した拓さんが、「仲良しっていいね、羨ましいよ」と腹をかかえる。
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