カワイイ俺のカワイイ危機感

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学生鞄に入れるのならば、小ぶりの方がいいのだろうか。 なんと無しに黒地に数色のデイジーがあしらわれたひとつを手に取り、チャックを開けてみる。 裏地は中々強いピンク。 兄(仮)としてはもう少し落ち着いた色をと思うが、由実ちゃんはきっと喜ぶだろう。 「化粧道具を入れてもいいし、ちょっとしたお菓子も入れられるし。用途が自分で選べるから、使ってもらいやすいと思うよ」 「……お菓子も入れるんですか?」 そんな使い方もあるのか、と見上げた俺に、カイさんは思わずといった様子で軽く目を見張ると、恥ずかしそう口元を覆って視線を逸らす。 「……高校生の時って、飴とかチョコとか常備してなかった?」 「ああ、僕は買ってきた袋のまま鞄に突っ込んでたんで。カイさんもお菓子、持ち歩いてたんですね」 「……三限目くらいから、どうしてもお腹が空いてきて」 「あーわかります。それで体育とかならまだいいんですけど、教師が淡々と喋る系の授業だとヒヤヒヤしますよね。まぁ、僕も鳴ったコトありますけど」 俺のフォローはうまくいったのだろうか。出来るだけ気にしてない風を装って、別のポーチを手に取り開ける。 こっちの裏地も濃いピンク。 やっぱり女性は、こういった色が好きなのだろうか。 ポーチを置き、もう少し他にも見てみようとまだ回っていないフロアの奥へと歩を進める。 後ろから二人組の甲高い声が付いて来ているが、たまたま方向が一緒だけだったんだと思いたい。
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