カワイイ俺のカワイイ危機感

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("誕生日を贈り合う相手"は、吉野さんと拓さんだけか) 女性はこまめだ。 俺も俊哉も時成も、「おめでとう」の一言くらいはあるが、プレゼントを渡すまではしない。 (……いや、時成には飯おごったか?) 「良いのある?」 「っ」 ボンヤリとしていたせいで、覗きこんできたカイさんに反射で半歩仰け反った。 驚いたようにカイさんの目が見開かれる。 ヤバイ、避けているように見えたかも。 「す、みません! ビックリして、つい」 「……珍しいね」 (なんか、言いワケしないと!) 「そ、そういえばカイさんの誕生日っていつなんですか!?」 (言いワケになってねー!!!) 駄目だ。全然駄目だ。 アレだけ俊敏だった俺の機転は何処行った!? 「誕生日はね、ちょうど二週前だったんだ」 「あ、最近だったんですね……おめでとうございます。って、言ってくださいよ。前後にも会ってるじゃないですか」 確認しなかった俺も悪いが、理不尽に感じた悔しさに唇を尖らせた。 そんな俺を見て、カイさんがクスリと笑う。 「会えるだけで嬉しかったから、すっかり忘れてて」 「またそういう……自分から言ったらいけない規則なんですか?」 「ううん。当日も本当に忘れてて、里織から連絡きて思い出したんだよ」 成人した辺りから、どうも日付に疎くなり自分の誕生日を忘れる、という現象は俺にも数度経験がある。 カイさんも案外、無頓着みたいだ。 でも、やっぱり。
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