カワイイ俺のカワイイ危機感

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「……"おめでとう"くらいは、言いたかったな」 「ユウちゃん?」 「へ? あ、いえ、コレとか可愛いですよね!?」 うっかり口に出てしまった未練を誤魔化すように、慌てて目ぼしいひとつを指差して取り繕う。 なんなんだ俺は一体。うっかりだらけで目も当てられない。 カイさんの顔も見れずに「あ、こっちのほうが由実ちゃんに似合うかも」などと白々しく続けていると、小さな声がポツリと届いた。 「……ユウちゃんは、どうして」 「え?」 カイさんへ視線を向けると、カイさんはハッとしたように暗い表情を笑顔に変えた。 「あ、ううん、ごめんね。次はちゃんと、言うから」 (……今のは) せっかく"彼女"の片鱗を見つけても、その欠片は掴みとる前に、手元で綺麗にかき消されてしまう。 変えられない距離。 いや、こうして"彼女"の欠片が晒されるようになっただけでも、大進歩なのだろう。 結局、熟考に熟考を重ねた末、ゴールドの花の中央に明るいオレンジの石があしらわれた楕円形のバレッタを選んだ。 カイさんのアドバイス通り、明るい性格の由実ちゃんにピッタリだという俺のイメージと、そろそろ大人っぽさが欲しいと呟いていた由実ちゃんの言葉を参考にした。
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