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(それもネックレスとか……重いよな)
とりあえず、もう少し考えよう。
「お待たせし……」
言葉を飲み込んだのは、ふたりの女子高生がカイさんに声をかけていたからだ。
どうやら一緒に写真を撮って欲しいとせがんでいるようである。
見知らぬ相手にも特攻をかけられる若さって羨ましい。
だがカイさんは苦笑を浮かべながらやんわりと断っているようだ。
店の規約なのか、本人が写真嫌いなのか。
どちらなのかはわからないが、ともかく、"断っている"という事実があれば俺には十分だった。
すぅ、と息を吸い込んで、めいいっぱい気合を入れる。
「ごめんなさい、お待たせして」
意図的に鳴らした足音。
女子高生が何事かと振り返ったタイミングを見計らい、伏し目がちに顎をひいて指先でそっと右耳に髪をかける。
次いでゆっくりと視線をカイさんへ向け、ニコリと綺麗な笑顔を一回。
それから目だけで彼女達を見て、再び真っ直ぐにカイさんを捉える。
「お邪魔でした?」
言葉は必要最低限に。親密さを匂わせる為だ。
カイさんも察したようで、先程までの困り顔とは一変し、ふわりとした極上スマイルを浮かべる。
「ううん。待ってた」
女子高生達の顔が真っ赤に染まる。
(うん、まあ、そうだよな……)
あの攻撃に耐えるには、強い精神と慣れが必要だ。
まんまと策にはまった女子高生を心中で哀れんで、俺はカイさんに嬉しげな微笑みを返す。
女子高生達はそんな俺達をオドオドと交互見て、後ずさるように一歩下がった。
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