カワイイ俺のカワイイ危機感

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「あの、わたし達……」 「っ、すみませんでしたっ!」 バタバタと駆けて行ったその背を「こけなきゃいいけど」と見送り、ギアを通常に戻した俺は息をついてカイさんへ歩を進める。 と、カイさんは堪え切れないといった風に吹き出して、片手で口元を覆いながらクツクツとお腹をかかえた。 彼女達を馬鹿にしているのではない。いわばこれは、"ご機嫌"だ。 「……カイさん」 「っ、ごめん、助かったよ」 「……あんな全力の笑顔を返してくるから、どうしようかと思いましたよ」 「ユウちゃんなら、上手いこと纏めてくれるかなって」 「僕に放り投げないでください」 呆れ顔で苦言を呈した俺に、やっとのことで笑いを引っ込めたカイさんが「ごめんね」と言いながら息を整える。 「何がそんなに楽しかったんですか」 「いや、久しぶりに見たなって思って。あーゆーユウちゃん。やっぱり凄いね」 「……それって、ほめてます?」 ジトリと見上げた俺に、カイさんは肩をすくめた。 「うーん、でもやっぱり、オレはいつものユウちゃんのほうがいいかな」 まったく、この人は。 「知ってますよ。今回は緊急時だったので。まぁ、助けるにも"ヒーロー"がこの格好じゃあ、カッコつきませんけど」 「そんなコトはないよ。でも……」 俺をみつめるカイさんが、寂しげな笑みを浮かべた。
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