カワイイ俺のカワイイ贈り物

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まったく、行動を起こすのは俺だろうが、と苦笑して、時成の頭をポンと撫でる。 「わかってるって。あとはその場の勢いで言っちまうか、そのまま綱渡りを続けるか、もうちょっと考えてみる」 「……ていっても、この後なんですよねー」 「だな」 カイさんのエスコートはこのバイト後に予約がある。その時に例のネックレスを渡すつもりで、持ってきているのだ。 誕生日プレゼント、なのだが、そもそもこうしたモノを渡せば、どんな類にしろ少なからず好意があると伝わってしまうだろう。知られてしまえば、きっとカイさんは俺との距離を取り始める。 勝負をかけるなら、ココしかない。 (やっぱ決め時だよなぁー……) ドリンクを乗せたトレーを持ってホールへと踏み出す。頭の中では忙しない攻防戦。 だから、ついうっかりだったのだ。 「ユウちゃん、どこいくの?」 艶のある高い声にはっと思考が途切れる。このドリンクをオーダーした、レナさんの声だ。 気付けばレナさんの座る卓をすっかり通り越そうとしている。 しまった。自身の失態を理解するなり慌てて戻り、頭を下げながらドリンクを置く。 「すみません、レナさん」 「別にこれくらい、構わないわ」 クスクスと笑うレナさんは、ゆっくりと机に肘を付き、「それよりも」と組んだ手にもたれながら上目遣いで俺を見上げた。
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