カワイイ俺のカワイイ贈り物

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これは後でちゃんと話しを聞きにこないと。そう思いながらパントリーへ戻るも、厨房の担当者はまだ忙しそうに背を向けている。 おかしいな。 覗き込もうとした瞬間、強い力に手首をぐっと引かれた。 「わっ」 トン、と背に触れた硬い感触が壁だと気づいた時には、俺の右肩は縫いとめるように掌で抑えられ、左肩の横にも閉じ込めるように腕が伸びていた。 眼前には妙に深刻な光を帯びた目。 少し折り曲げた膝のやや上に、ふわりとしたスカートの感触。 「っ、時成?」 (これが噂の壁ドンか! って、そうじゃねぇ!!!) あいら姿の時成に突如壁ドンをかまされるという、まさかの展開に思考が追いつかない。 「ど、どうした?」 僅かに高い位置にある顔を困惑気味に見上げる。 と、真剣な眼差しのまま、時成が眉根を寄せた。 「レナさんに、何を言われました?」 「……へ?」 「さっき、何の話しをしていたんですか」 「なに、って……」 (いったい、何をそんなに気にしてるんだ?) 語尾が間延びしていないのは、それだけ真剣だという証だ。 「えっと、さっき、渡すだけにすんのかどうすんのかーって話ししてただろ? そればっか考えちゃってて、うっかり席を通り過ぎちまったんだよ。だから、ボンヤリするほど何考えてたのかって、訊かれたぐらいだけど……」 「……それだけですか」
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