カワイイ俺のカワイイ贈り物

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それと、もうひとつ。 「……『それだけじゃないでしょうけど』って、なんのコトだったんだ?」 シフトを終え、着替えを済ませた俺は『Good Knight』へと向かいながら、浮かんだ疑問に思考を巡らせていた。 不機嫌なレナさんに謝罪を口にすると、彼女は「まぁいいわ」と不敵な笑みを浮かべた。 「それもきっと、次に来る時には解消されているでしょうし、今回は許してあげる」 一瞬、時成の思惑に気づいていたのかと、心臓がヒヤリと縮んだ。 けれど、そうではないらしい。 挨拶をしにきた時成にも、レナさんは至っていつも通りの笑みで「また来るわ」と手を振っていた。 (レナさんは、何を言っていたんだ……?) 普段なら、ちょっと疑問に思うだけでここまで思考が引っ張られる事はない。 けれども店を出る前に、「今日は出来るだけ寄り道をしないでくださいー」と言ってきた時成の真剣な表情に、どうにも嫌な予感がしてならない。 「……着いちまった」 見慣れたビルに足を止め、階段を登ってから俺は思考を切り替えた。 レナさんの件は、一旦後だ。今日はある意味、勝負の日でもある。 結局、どうするか決めずに来てしまった。
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