カワイイ俺のカワイイ贈り物

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「ユウちゃんはよく出来たカイの『お客様』だね」 「っ」 拓さんの言葉にカイさんが息を詰めた。 別に、拓さんは何も間違った事はいっていない。カイさんだって、これまで何度も俺を『お客様』と称していた。 けれどもカイさんは、明らかに動揺している。そしてその動揺する様を見て、拓さんは何故か満足気に口角を上げた。受付の机を回り、俺の方へ歩を進めて来る。 (な、んだ?) 狼狽える俺の目の前で、拓さんがコツリと靴底を鳴らした。 カイさんから、拓さんの表情は見えていない。それもわかった上で、拓さんはその表情を作ったのだろう。 悲しそうな、嬉しそうな、柔らかく瞳を緩めた笑み。 驚愕と戸惑いに立ち竦む俺に、拓さんは腰を折り曲げ、そっと耳打ちをしてきた。 「――ありがとうね」 「!?」 「さ、会計も終わってる事だし。いっといで、カイ」 「……はい」 いつもの表情で振り返った拓さんに、カイさんが一度くしゃりと複雑そうに顔を歪めたが、「行こう、ユウちゃん」と俺を促して扉へ歩を進める。 (なんだ? 今のは) 後方を何度か見遣りながら、俺もカイさんの後を追い扉へ向かう。 拓さんは目があっても、軽薄な笑みを崩さない。
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