カワイイ俺のカワイイ贈り物

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「……いえ、気にしてませんよ? 僕がカイさんの『客』なのは、事実ですし」 「っ、そう、だよね」 (なんかカイさん、変だな) いつもの余裕がない。 視線も時折ボンヤリと宙を漂っているし、何より隣に立つ距離がこれまでよりも僅かながら遠い。 果たして本人の自覚があるのか定かではないが、俺の見立てで言うのなら無意識だろう。 モヤモヤとした蟠りを胸に押し留め、辿り着いた吉野さんの店。 案内された定位置の窓側奥の席に座るなり、俺は早速切り出した。 「カイさん、何かあったんですか?」 「え?」 まさか俺から問われるとは思わなかったのだろう。 カイさんは虚を突かれたように目を丸くした。 マジマジと見つめる瞳に思わず尻込みするも、なんとか平常を顔に貼り付けて、俺は呆れたような顔をする。 「なんか、らしくないですよ?」 「……そう? って、ユウちゃん相手じゃ通用しないよね」 苦笑したカイさんに、俺は肯定するように不敵にニッコリと微笑んでみせる。 これまで様々なやり取りを交わしてきた俺達は、互いに下手な誤魔化しは通用しない。 肩を竦めたカイさんは躊躇うように視線を落とし、「とりあえず注文しよっか」と切り出した。
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