カワイイ俺のカワイイ贈り物

19/23
前へ
/238ページ
次へ
「っ、そ、れは」 無意識なのか、白い頬が徐々に朱色にそまっていく様に、俺は目を細めた。 ――ああ、もしかして。 「はい! お待たせしてごめんね!」 「っ」 「ありがとうございます、吉野さん。今日はちょっと混んでますね」 「ありがたい事だけど、コレはちょっとタイミングが被ったってヤツかしら。ごゆっくり!」 注文の品と取り皿を一枚置いて、吉野さんは片手を振って戻っていく。 言葉を探すように視線を彷徨わせるカイさんを目端に捉えながら、俺はすっかり慣れた手つきで小皿に取り分けた。 「はい、カイさんどーぞ」 「っ、……ありがと」 俺の置いた皿を呆然と見つめるカイさんは、いつものカラトリーの手渡しにすら思考が回らないらしい。 (まぁ、だろうな) 心の奥に薄暗い靄が溜まっていくのを感じながら、俺はひとり納得した。 カイさんの『らしくない』原因は、おそらく、誰かに『恋』をしているからだ。 可能性として、頭にはいれていたつもりだった。 カイさんの仕事は、人と会う機会だって多い。
/238ページ

最初のコメントを投稿しよう!

146人が本棚に入れています
本棚に追加